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いじめ対策プロジェクト

見過ごされてきた傍観者

 いじめ対策プロジェクトは見過ごされがちな傍観者への介入を進めることで、年に 14 万件起こっているいじめ被害を減らすプロジェクトです。このプロジェクトは2016年に新しく始まりました。

 いじめは平成24年度上半期で 144,054 件発生し、そのうち生命や身体の安全を脅かすような重大な事態に至るおそれがあるものは学校側が把握しているだけでも 278 件ありました。

 一見、いじめは加害者と被害者の二者間の問題であるように思われるかもしれません。しかし、いじめは単に二者間の問題ではなく、傍観者の肯定的な態度がいじめる側の欲求を満たす役割を果たしています (Salmivalli, C., & Peets, K. 2008 および Almivalli, C., Kärnä, A., & Poskiparta, E. 2010)。このことは、ある中学校での 196 人に対する質問紙調査の結果から、傍観者の規範的圧力がいじめを抑制し防止に効果的であることからも支持されています (大西, 2015)。

 実際に、傍観者への介入は有効であることが示されています。10 か国 14 のプログラムを比較した研究から、被害者・加害者への個別対応のみならず、学校全体への介入が重要であることが示唆されています (Smith et al., 2004)。加えて、世界各国 44 のプログラムの報告書によると、学校をベースとしたいじめ対策プログラムは、いじめを 20-23% 減少させる効果があることが示されています (Farrington & Ttofi, 2010)。

 日本におけるいじめの傍観者へのアプローチは道徳教育や啓発にとどまっています。そこで、いじめ対策プロジェクトでは、複数の調査で効果が実証されている KiVa プログラムの導入・普及を目指しています。

 KiVa プログラムとは、フィンランドのいじめ対策公式プログラムです。このプログラムは、傍観者がいじめを目撃したときに被害者を助ける行動を起こせるようになることを目的とします。更に、保護者向けのガイドブックや個々のいじめへの対応により、発見・対処までカバーした包括的なプログラムがパッケージ化されています。

 KiVa プログラムの効果は複数の調査により示されています。フィンランド国内の 39 校 (3,347 人) を介入群、39 校 (2,304 人) を対照群とした無作為割付試験 (randomized controlled trial, RCT) 調査では、プログラム導入 9 カ月後、介入校では調べた 9 タイプすべてのいじめが 21-63% 減少しました (Salmivalli, 2011)。他にも Kärnä (2011) や Williford (2012) といったフィンランド国内の RCT 調査により、被害・加害の減少やいじめられることへの恐怖の減少などが報告されました。他国においても、例えばオランダでは被害報告が 15.5% 減少しました (Veenstra, 2014)。その他にイギリス、イタリアでもいじめの減少が報告されました (順に Hutchings & Clarkson, 2015 および KiVa International)。また他のプログラムと比べて KiVa はいじめへの効果のオッズ比が高いことがレビューにより示されています (David P. Farrington, Maria M. Ttofi, 2007)。

 日本では、イギリスやオランダといった他国と比較して傍観者が増え仲裁者が減りつつあるという傾向があります (国立教育政策研究所・文部科学省, 2005)。いじめ対策プロジェクトは、効果が実証された KiVa プログラムを専門家と協力して日本で導入・普及することで、傍観者への効果的な介入によりいじめを減らすことを目指して取り組んでいます。

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